2人の出会いと今

――お2人が初めて一緒につくられた楽曲は「デリート」でした。お互いの初対面はいつでしたか?

TAKU INOUE: もともとは自分のマネージャーからあのちゃんを紹介してもらって。その後「とりあえず一緒に曲つくってみましょう」という打ち合わせでお会いしたのが、初対面ですね。そのときにポケモンの話をしたのを覚えています。

ano:僕もポケモンの話をしたのは覚えてます。TAKUさんは結構ゆるい印象で……まだ制作も始まってなかったから、得体の知れないイメージでした。曲づくりが進むなかで、「あ、こういう音楽が得意なんだな」っていろいろ知っていきました。

――その後も「Peek a boo」「SWEETSIDE SUICIDE」「F Wonderful World」など様々な楽曲を共作されています。お2人の曲づくりはどのように進めているのでしょうか?

TAKU INOUE:制作用のLINEグループがあって、何かあればそこにって感じでやってます。自分が最初にオケをつくるパターンもあれば、あのちゃんが書いた歌詞にメロをつけるパターンもあるし、さまざまです。

――制作やステージでご一緒するなかで、お互いにリスペクトしている所はありますか?

TAKU INOUE:僕がいつも思うのは、テレビの現場などでカメラを通してあのちゃんを見ると、別人に見えるというか。やっぱりフォトジェニックな人なんだな、オーラのある人なんだなと素直に思いますね。特に裏表があるタイプでもないんですけど、カメラの前に立つと切り替わるというか。

ano:カメラが回ったら、というより、逆に普段の方がフワッとし過ぎてるのかもしれない……。「(本番は)1回しかない」って思うから、そういう意味では切り変わってるのかな。あんまり自分では意識してないんですけど、裏も表も見てる人からの意見ってなかなか聞かないから、新鮮な感じ。

――あのさん側はどうでしょう。TAKUさんに対してリスペクトしている所はありますか?

ano:それこそステージ上だと、いるだけでスタイリッシュになる。

TAKU INOUE:おお……。

ano:佇まいもそうですし、現場はどうしても男臭い部分があるのを、中和って言うのかな?中和してくれる感じ。ストンって、堂々といてくれる。

曲つくるときも、「こういう曲をつくりたい」っていうオーダーをするとちゃんとそれに沿って返してくれるし、「これが好きならこういうのもいいんじゃない?」っていろいろ提案してくれたりとか、柔軟性がすごいんです。だからこそ僕の曲にもいろんな曲があると思いますし、バリエーションを広げてくれてる。それができる人って意外といないんじゃないかなって思うから、信頼して曲は頼んでます。

あと、スポーツの服が似合う。

――今日も着ていらっしゃいますね。

TAKU INOUE:あのちゃんがステージでジャージを着ることが多いので、じゃあ俺も着ようかなと(笑)。もちろん自分が好きっていうのもありますけど、ちょっと意識して合わせてます。

ano:似合ってます。

――ちなみに普段こういう会話ってされるんですか?

TAKU INOUE:しないですね。スタジオでもそんなに、がっつり会話するタイミングはないですから。

ano:僕は普段喋らないタイプなんですけど、それでもTAKUさんは自然体でいてくれる感じが、すごく楽です。無理してたくさん喋りかけてくるみたいな、変な感じがないのがいい。

――今回の「AIDA」リリースをもってあのさんはメジャーデビューされますが、メジャーデビュー決定以降、身の回りで何か変わったことはありましたか?

ano:特にないです……。

TAKU INOUE:なさそう。

ano:曲のつくり方も変わらないし、やってることもそんなに変わらないし……これからやれることの幅が広がったりするのかなとは思いますけど。

――TAKUさんも2021年にメジャーデビューされましたが、思い返してみていかがでしたか?

TAKU INOUE:トイズの仕事自体は2018年からしていたので、「心理的に変わらない」っていうのは僕もわかりますね。同じく曲のつくり方や仕事の仕方は変わらなかったです。「売れるかな」ってちょっとドキドキする機会は増えました。

「おじさん、わかるな~!ってなっちゃって」 2人の好きなキャラクター

――今回のタイアップが決まる前の2020年11月、2人と尾崎エグゼクティブプロデューサーとで面接があった、というお話をお聞きしました。

TAKU INOUE:あったなあ。面接というか、打ち合わせみたいなものですけど。多分プロデューサーとしては、あのちゃんの人となりを見てみたかったんじゃないかなと思います。ひとまず作品の概要を聞いて、曲を担当するとしたらこんな感じのイメージで、という話をした記憶があります。

ano:詳しいことは覚えてないんですけど、何も喋れなかったような……。

TAKU INOUE:うん、あのちゃんは何も喋ってなかった(笑)。僕は緊張してましたね。素直に「この仕事はやりたいな」って思ったし、もしこの場で決まるのであれば頑張らなきゃ、と。

――anoさんはもともと、アニメタイアップをしたい気持ちはありましたか?

ano:やってみたさはありました。タイアップが生み出すものって、自分だけの思考とか世界観によって生まれるものだけじゃないと思ってて。いろんなアーティストを見ていて、楽しそうだなとは思ってたので。

――アニメ本編の前後に流れると、曲単体で聴くのとは意味が違って聴こえるとか?

ano:そうですね。曲の捉え方が変わることもあるだろうし、そのアニメのファンだと印象もまた違ってくると思うから、それはすごい楽しそうだなって。

――「タイバニ」に対しての印象はいかがでしたか?

TAKU INOUE:僕はちょうど「タイバニ」の1期が流行ったぐらいのときに、バンダイに入社したんですよね。もちろん自社の作品として知ってはいましたし、社会人として仕事を始めた頃に見たからこそ、響くこともありました。今回曲をつくるにあたってもう1回見てみたんですけど、当時とは立場が変わってて、家族など守るものがある状態で見ると、また別の形で響いてきましたね。

ano:僕の印象は、インパクトが強かったです。なんかスポンサーのロゴが衣装にいっぱい書いてあって、これは何だろうって。最初は処理に困ったんですけど。

TAKU INOUE:あの広告システムは斬新でしたからね。

ano:ただ見ていくうちに、愛があるからこその人間関係のすれ違いとか、意外と自分たちの日常にもリンクしてくる部分があって、共感もできました。単なるヒーローものなのかなと思っていたら、人間同士の気持ちのやりとりの難しい部分も描かれていて、見ごたえがありました。

――お2人の好きなキャラクターを教えてください。

TAKU INOUE:好きなのはブルーローズかな。音楽をやってるという共通点もありますし、単純にあのやりすぎたツンデレキャラみたいなのがいいなって。最初「ヒーローなんて」って言ってたのに、終盤首輪のスイッチを押すか押さないかの場面で、「私はヒーローとして最後まで仲間を信じる」と言い切ったところはすごくグッときましたね。

ただ、一番感情移入するのは虎徹です。彼がH-01との戦いで死にそうになってるときに、「虎徹さんって呼んでくれたときなんて、嬉しくて1人で飲みに行ったりして」ってバーナビーに話す所は「わかる~!おじさん、わかるな~!」ってなっちゃって(笑)。

ano:僕はドラゴンキッドが好きです。ねずみみたいなでかい耳をつけた中華風の衣装で、デザインが好みドンピシャなんですよね。僕っ子とかショートカットっていう共通点もあるし。最初は女の子っぽいものを身に着けるのが苦手だったけど、戦いや周りの人たちとの関わりを経て、最終的に髪飾りをつけられるようになった所で、めっちゃキュンときました。

自分もお兄ちゃんのお下がりしか着ない子どもだったし、共感する所がドラゴンキッドにはたくさんあります。

普段よりもスムーズに進んだ制作過程、作品に対するアプローチ

――anoさんは普段、作詞の作業はどのように進めているんでしょうか?

ano:ばーって……場所問わず書いてます。家で浮かんだときは家で書くし、外で誰かといるときに浮かんだらそこでiPhoneとかにメモする。

頭から書く曲もあるし、「デリート」のようにパッチワークっぽい歌詞に結果的になっているものは、パズルみたいにして並べてつくっています。今回のAIDAは、わりと一曲にしぼって、ばーって順番に書いた記憶があります。

――今までのanoさんの詞はどうにもならない閉塞感のような言葉が多かった印象なんですが、今回は「その中でもこうやって生きていくんだ」というような、決意や未来を感じさせる歌詞だと思っていました。特に<それは愛だ><それでも届けるよ確かなこの僕を><まだ何にでもなれるよ>など……。

ano:確かに<何にでもなれる>とかは今まで使ってこなかったんですけど、「タイバニ」のアニメを見て、普段の自分の思考や感情で止まりたくなくて。だからそういう言葉を選んだのもあるし、希望のある言葉でまとめられてよかったなとも思います。

今回の歌詞の「愛」はすごく大きなもので、僕が日頃感じる苛立ちとか、憎しみとか、孤独とか、そういうものも全部含まれてると自分では捉えています。普段自分だけで詞を書くのとは、また別の楽しさで書けました。

TAKU INOUE:「タイバニ」っぽくもあるし、それでもあのちゃんっぽさもあって、歌詞を受け取ったときは「頑張ったんだなあ」と思いましたね。

僕はサビの<二人はきっと馬鹿さ>の部分がすごく好きです。虎徹とバーナビーの間のじれったさも表現できてるし、本編の後に流れるエンディングのタイミングで聞いたら、絶対いいだろうなって。あれ最初はサビじゃなかったんですけど、「これ絶対サビの頭に持ってきた方がいい」って提案したんですよね。

――曲をつくる上で、TAKUさんが目指していた方向性はどのようなものでしたか?

TAKU INOUE:尾崎さんとの打ち合わせのときに「イケイケノリノリよりは、いわゆるエンディングっぽさがある方がいいですね」みたいな話をしていたこともあって、メロウな、メロディがきれいな音楽にしたいとは思っていました。

あとエンディングって本編の最後に流れるから、流れを壊したくないなと。「タイバニ」は絶対に良い終わり方をすると思っていたから、その余韻を引き継げるように、特にイントロはこだわりました。

――タイアップゆえのプレッシャーはありましたか?

TAKU INOUE:そもそも僕は、自分が触れてきたアニメの続編に携わった経験があまりなかったんですよ。だからそれ自体の嬉しさもあったし、やっぱり感情移入して見ていた作品に関われることの嬉しさもありました。

プレッシャーももちろんあったんですけど、この曲は久々にスムーズにできました。僕、普段は人に見せられないような姿で、うなりながら数日かけても完成しないみたいなタイプの人間なんです。でも今回は「これはいける」っていう感じのやつがすんなりできて、周りの反応も良くて。

――なぜ、いつもよりスムーズにできたんでしょうか?

TAKU INOUE:曲をつくるのって、まずはイメージを固めて、そのイメージを具現化していくような作業なんです。その際に「タイバニ」と、あのちゃんという大きな柱がすでに二本あったので、イメージ固めの作業がしやすかったのかな。

――ボーカルレコーディングでのエピソードはありますか?

TAKU INOUE:レコーディングもすごくスムーズに終わったので、良い意味でそんなに印象に残ってないんですよね。唯一覚えてるのは、2番Aメロが終わった後の「できるよ」のハイトーンの所。あそこはめちゃくちゃエモくしたかったので、ちょっとこだわったかな。

ano:僕、裏声しか無理だろうなと思って。そしたらみんなが……。

TAKU INOUE:「いけるいける!表でいけるよここ!」って、ね。

ano:結果、表で歌えて。

TAKU INOUE:地声でめちゃくちゃ良いのが出てきて。アニメで流れない所なのがもったいないんですけど、ぜひフルで聴いてほしいです。

「タイバニ」ファンが愛してくれる曲ができた

――せっかくの機会なので、お互いに聞いてみたいことはありますか?

TAKU INOUE:質問というか要望なんですけど、あのちゃんをまじえてご飯に行ったことがほとんどないので、機会があったら行きたいですね。

ano:ちょうどこういう時期だからっていうのもあるかも。僕もご飯は行きたいです。

――あのさんからTAKUさんに、聞いてみたいことはありますか?

ano:うーん、家族との休日の過ごし方……。

TAKU INOUE:それ本当に興味あるの!?(笑)

ano:音楽をやってる方って、家族との時間とかあるのかなって。

TAKU INOUE:なるほど。そういう時間もつくってますよ。子どもと遊んだりすると、自分にとってもリフレッシュになるし。意図的につくらないと、なかなかできないですしね。

ano:よかった、安心しました。

TAKU INOUE:安心していただけましたか(笑)。

――最後に「タイバニ」ファンの方に向けて、メッセージをお願いします。

TAKU INOUE:アニメの最後に流れるのを僕もすごい楽しみにしてますし、絶対本編からの良い流れがつくれているはずだと思うので、楽しみにしていただきたいです。よろしくお願いします。

ano:僕のこと知らない人もいっぱいいると思うんですけど、きっと「タイバニ」ファンの方が愛してくれるような曲ができたと思っています。曲でイントロクイズできるぐらい、アニメをいっぱい見て曲もいっぱい聞いてもらえたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。